五所川原（ごしょがわら）市　その１　−虫と火まつり−

津軽地方では古くから農作物を病害虫から守り、五穀豊穣を祈願する「虫送り」の行事が行われてきました。その「虫送り」をお祭り化した「奥津軽　虫と火まつり」が五所川原では行われており、この「虫」がマンホールのテーマになっています。 「虫」は憎たらしい害虫というよりユーモラスな怪獣のように描かれ、親しみさえ感じさせるほど。周りにはその虫を焼き払う「火」が描かれています。

毎年６月第三土曜日に行われる「虫と火まつり」を見てきました。古来より、田植えがひと段落したさなぶり（５月６月）に行われてきた行事で、昔ながらに藁で編んだ胴体に木彫りの竜頭の「虫」を作り、町中を練り歩きながら最後は町の外の河川敷に運びます。 元々の「虫送り」はもっとシンプルに行われていたのでしょうが、口から火を吐いたり顔をカラフルに塗ったり、お祭りの気分を盛り上げるため色々工夫を凝らしているようです。

		たくさんの人が沿道に陣取り、「虫」がやってくるのを今や遅しと待ち構えます。五所川原市民にとっては年に一度の一大イベントです。

「村人」ならぬ「市民」がロープを引っ張って虫を引き回します。引っ張り役の人は手を振って沿道の声援に答えていました(左)。 「虫送り」Ｔシャツも登場(右)。

土曜日の夕方から行われる「虫と火まつり」。郷土芸能も披露されてお祭り気分を盛り上げていました。

お祭りにはいくつかの団体が参加しますが、虫の色と形もリアルなものからお飾り的なものまで様々です。虫送りは元々、村の若者たちが竜型の虫をかついで笛や太鼓、鉦のおはやしに合わせて村の中を踊り、最後は村はずれの一番高い木の幹に虫を吊るして五穀豊穣、悪疫退散を願ったといいます。農薬などない昔は、虫に穀物を食われることは何よりも恐れられたでしょう。農業が近代化した今でも、そんな思いを受け継いで虫送りに豊作の祈りを託し、その行事が現在まで受け継がれているなんですごいなと思いました。

		送られた「虫」は岩木川の河川敷に運ばれました。ようやく陽も暮れてきて、虫がほの明かりに怪しく浮かびます。

		クライマックスは「お焚き上げ」。虫はとうとう火にくべられてしまいました。合掌．．．　虫送りが火まつりに発展したのは最近のことで、これはお祭りの「見せ場」のようなものでしょう。 なおこの日この時間はサッカーワールドカップの日本×オランダの真っ最中。にもかかわらず河川敷にはたくさんの見物客が来てお焚き上げに盛り上がっていました。五所川原市民の虫送りに対する思いは、サムライ・ジャパンに対してよりも熱く深いのでしょう．．．

撮影日：2010年6月19日